自然災害後のコミュニティ再生プロジェクト:
東日本大震災からの復興
近年、世界中で地震、津波、高波、台風、ハリケーン、竜巻、火山噴火、干ばつ、山火事など様々な自然災害が頻発しています。日本でも地震、津波、洪水、がけ崩れなど毎年多くの人的被害を伴い、コミュニティの弱体化や崩壊を招くような自然災害が起きています。特に2011年3月11日の東日本大震災では2万人近い死者、行方不明者を出し、その後の復興事業にもかかわらず、多くの地域社会で活力の衰退が続いています。東日本大震災で地震とそれに伴う津波が原因で福島第一原子力発電所が事故を起こし、4年経った現在も周辺地域の多くの住民が避難したままであり、こうした複合災害が今後も起こる可能性があります。社会的活力を失わせる原因は自然災害以外にも戦争や紛争、疫病、長期的な気候変動による海面上昇や人為的原因による大気汚染や水質汚染、水不足など様々あります。地域社会やコミュニティがそうした災害の被害から立ち直るには、コミュニティがダメージを受けても崩壊に至らず再生する力を温存する弾力性(resilience)が備わっている必要があります。このプロジェクトは、日本の宮城県石巻市を中心に3.11大震災からの復興プロセスにボランティアとして加わりながら、再生力を持った地域社会(resilient community)をデザインする可能性について実践的に考察を行い具体的な提案を行いました。
プロジェクトは対象となる地域と実施時期によって三つに分かれました。第一のプロジェクトは金華山プロジェクト(2011.10~継続中)。第二のプロジェクトは網地島プロジェクト(2014.07~継続中)。最後のプロジェクトは波渡プロジェクト(2014.07~継続中)です。
スペダギ・プロジェクト:
ローカルな自然素材を活用した分散型プロダクションと社会デザイン
化石燃料由来の合成樹脂や金属素材を大量に消費する現代の工業生産方式に替わって、ローカルな再生可能な自然素材を活用した地域分散型のものづくりを推進し、なおかつそれによって生産される製品を地域社会の問題解決に活用するというプロジェクトです。スペダギとはインドネシア語で朝+サイクリングを意味する造語です。このプロジェクトはインドネシアの世界的に有名なプロダクトデザイナーのシンギー・カルトノ氏によって始められました。素材はジャワ島をはじめインドネシアに広く自生するバンブーです。この成長が早く豊富に供給される再生可能な自然素材は、従来から建材をはじめ様々な日用品の材料として活用されてきました。これまでもバンブーあるいは竹をフレームに使った自転車は世界各地でデザインされ、製造されてきましたが、その多くは手工芸的な一品生産で、性能的にも価格的にも作品と呼んだ方がふさわしい性格を持っていました。しかし、スペダギのバンブーバイクは工業生産的な技術を取り入れ、中量生産が可能なデザインとして開発され、改良を加えられてきました。さらにこのバンブーバイクがユニークなのは、その用途と役割があらかじめ想定されていることです。村を巡回し、コミュニティの人々と言葉を交わしながら問題点を発見し、その解決策を探り、場合によっては現場に急行するための移動手段には、自動車では速すぎて小回りが利かず、歩いたのでは遅すぎて、自転車が最適なのです。スペダギバンブーバイクはそうしたソーシャルデザインの道具として開発されました。
このプロジェクトは実施する地域によって二つに分かれています。第一のプロジェクトはスペダギ・プロジェクトへの参加(2015.01~継続中)です。第二のプロジェクトはスペダギ・ジャパン・プロジェクト(2015.04~継続中)です。
カンボジア絵本プロジェクト:
デザインで国づくり支援
カンボジアではポルポト政権時代に多くの知識人が虐殺され書物は焼かれてしまいました。カンボジアの識字率は76.3% 世界183国中133位と低く、この識字率の低さはカンボジア発展の阻害要因の一つにもなっていると指摘されています。このような状況を改善するためにTZU DESIS Labは、カンボジアメコン大学の大矢千穂子准教授と協働し誰でも好きな時に絵本をインターネットから無料でダウンロードして読むことができるクメール語の電子絵本を制作することとなりました。カンボジアの絵本の多くは、外国から輸入されたものや海外の慈善団体から寄付されたものが多く、カンボジアの社会や文化に合ったものがないのが現状です。またカンボジアで制作されていても絵本の絵が非常に怖いものが多く子供たちを怖がらせてしまうので中々絵本を手に取ってもらえません。本プロジェクトでは、カンボジアの子供が自国の文化を楽しく学びながら読み書きができるようになる絵本を制作することを通してカンボジアの国づくりに貢献することを目的としています。またカンボジアメコン大学の学生に彼らの祖父母から昔聞いたお話の聞き取り調査をして集めてもらい、それらを絵本化するプロジェクトも進行中です。おばあちゃん、おじいちゃんたちが昔聞いた童話の記憶を絵本として記録することによって次世代に伝える地域文化の持続可能性にも貢献していきます。
サステナブルな地域づくりプロジェクト:
八王子における事例研究
TZU DESIS Labは多摩地域をベースに大学院の授業である造形プロジェクト科目と連携し,サステナブルな地域づくりを進めていきます。本プロジェクトは東京造形大学がある八王子をフィールドにしました。この地域が抱える社会的な課題の発見し、改善・解決するためのプロジェクトを学生とともに考え、作っていいきます。また単に地域の課題を解決して終わりでなく、食、エネルギー、資源消費など自立分散型に八王子を変革するようなプロジェクトも考えていきます。